これが私の王子様

 だから、料理は無理。

 そう、和人に話す。

「残念」

「……すみません」

「いや、俺も悪かった」

 言葉ではそのように言っているが、相当残念がっているらしく肩を竦めていた。

 和人の姿に何か思うことがあったのか、ゆかは「家庭科の授業で、クッキーを作ります」と、口にする。

 勿論、和人が「クッキー」という言葉に食い付かないわけがなく、一方ゆかは自分がとんでもないことを言ってしまったことに気付くが、もう取り消せるものではなく、和人はクッキーを期待していた。

「それ、貰える?」

「……多分」

「多分?」

「さ、差し上げます」

 食に対しての和人の圧力に戦いたゆかは、折れてしまう。

 ゆかの了承に気を良くしたのか、和人はビニール袋からおむすびと菓子パンを取り出すと、お礼とばかりにゆかに差し出す。
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