これが私の王子様
当初の印象としては、もっと堅苦しくて気難しい人物と予想していたが、いざ二人っきりで話してみれば、気さくで取っつきやすい人物。
御曹司という立場を鼻にかけず、どちらかといえば庶民的。それに大口を開けおにぎりを食べている姿に、可愛らしい印象を受けた。
食べている姿を思い出したゆかは、思わず表情が綻んでしまう。
しかし周囲の目が気になるのか、ゆかは足早に改札を抜けるとホームへの階段を駆け上がる。ふと緊張の糸が解けたのか、一気に疲労感に襲われる。
登校初日、多くの出来事があった。
詩織に出会って、学校一の人気者の王子様とお近づきになれた。
そして、クッキーが食べたいと言われた。
まさか王子様と呼ばれている人物から、そのようなことを言われるとは予想もしていなかったらしく、微かに紅潮する。
(上手く作られると、いいけど……)
クッキーは甘い方がいいのか、それとも甘味が少ない方がいいのか。
せめて甘い食べ物が好きなのか嫌いなのか聞いておけばよかったと後悔するも、和人とは別れてしまった後だ。
クッキーの作り方についてあれこれ考えていると、電車の到着をアナウンスがゆかの耳に届く。