これが私の王子様

 可哀想。

 そう、ゆかは心の中で呟く。

「で、どうだったの?」

「どうって?」

「ゆか、嬉しそう」

「そ、そうかしら」

 突然の詩織からの言葉に、ゆかは何ともわかり易い態度を取る。

 友人の反応に、詩織は大笑いすると「やっぱり」と言い、周囲に誰もいないのだから自分だけには教えてほしいと頼む。

 確かに今二人がいる場所は、滅多に生徒が立ち入ることのない屋上なので、この場で話しても誰にも聞かれることはない。

 それでも周囲が気になるのか、ゆかはあたりを見回してしまう。

 周囲に誰もいないことを確認すると、和人に家庭科の授業で作るクッキーがほしいと頼まれたことを話す。

 その発言に詩織が反応しないわけがなく、驚きに似た声音を発すると表情が徐々に緩んでいく。詩織にしてみたら和人がそのようなことを言うとは予想できなかったらしく、ネタ収集と喜ぶ。

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