これが私の王子様

「ネ、ネタって……」

「いけない?」

「……うん」

「大丈夫。悪用しないから」

「本当?」

「本当よ。ゆかは、裏切らないって」

 真剣に語る詩織に、ゆかは頷き返す。

 詩織は一見いい加減な部分が目立つが、といって和人に熱を上げている多くの女子生徒とは違う。

 それに本当にゆかを裏切るというのなら、堂々と「ネタ」と、発言することはしない。

「で、直接渡すの?」

「その方がいいかなって」

「それ、危険よ」

「危険?」

 詩織の話では、家庭科の授業後自分が作った手料理を和人に食べてもらおうと、一斉に押し掛けるという。

 しかし和人は一度も、彼女達が差し出す手料理を受け取ったことがない。

 だが、ゆかの手料理は受け取る。

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