これが私の王子様

 その先に待っているのは、火を見るよりも明らか。

「ど、どうしよう」

「私が、代わりに渡すわ」

「それだと、詩織が……」

「平気。私が結城君を狙っているなんて、誰も思ってもいないから。それにその方が、確実よ」

「それなら……」

「任せて」

 自分に任せれば何も心配ないと言わんばかりに、自分自身の胸を叩く。その力強い姿に、ゆかの表情が綻ぶ。

 ふと、学校中にチャイムの音が鳴り響く。チャイムの音にゆかと詩織はハッとなると、急いで屋上から出て行く。

 次の授業は数学で、この授業の担当する教師は時間に厳しいことで有名だった。

 遅刻したら何を言われるかわかったものではないので、二人は階段を駆け下りると急いで教室へ駆け込む。

 運良く、担当の教師が来る前に着席を果たすが、駆けてきたことにより二人とも肩で呼吸を繰り返していた。

 見兼ねた生徒が声を掛けて来るが、詩織は「平気平気」と言い、手を振る。
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