これが私の王子様

 といって、カンニングするほど詩織は馬鹿ではない。カンニングをして教師に見付かってしまったら、いつも大量の情報を握ってそれを盾としている立場が逆転してしまうからだ。

「菅生、どうした」

「何でも……ないです」

「難しいか?」

「……はい」

「しっかり、勉強していないからだ」

「ごもっともです」

 流石の詩織も、言い返すことができない。今のやり取りに生徒達の笑い声が響くが、教師の手を叩く音に一瞬にして静まる。

 三十分のという時間の中で、解かないといけない。

 問題数にしてみればゆとりのある時間だが、数学が不得意な者にとっては短い時間。多くの生徒が頭を懸命に働かせ、問題を解く。

 三十分後――教師が、テスト終了を知らせる。

 それと同時に生徒達は圧迫感から解放され、清々しい表情を浮かべていた。その中でできが悪かったのだろう、詩織は机にうつぶしていた。
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