これが私の王子様
「詩織」
「ゆ、ゆか」
「大丈夫?」
「何とか、大丈夫。ゆかは、最後まで解けた? まさかこんなに難しいとは、思ってもみなかったわ」
「確かに、難しかったかも。前の学校でテストの個所を勉強していたから、ちょっと良かったかも」
「いいわね。私、最後まで解けなかった」
この調子だと赤点確実だと、詩織は盛大な溜息を付く。
本人から数学が苦手と聞いていたが、まさかここまで苦手とは思ってもみなかったのだろう、ゆかは掛ける言葉が見付からない。
「こういう時、結城君が羨ましいわ」
「その気持ち、わかるかも」
「あれだけ頭がいいと、テストも楽々でしょうね。同じ授業を受けているのに、そうして差が……」
再び、詩織が溜息を付く。
項垂れている詩織にゆかは思わず苦笑するも、その意見に賛同することができた。
ゆかは帰宅後真面目に机に向かっているが、いまいち容量が悪いらしく上手く勉強をすることができない。
秀才は秀才なりの勉強の仕方があるのだろうと考えるも、直接聞く勇気が出ない。