これが私の王子様
「な、何?」
「はじまっている」
「えっ! あ、有難う」
ゆかの言葉に詩織は慌てて教科書を開くも、パニックになっているらしく、どこのページを捲っていいのかわからないでいた。
見兼ねたゆかが黒板に書かれている公式を頼りに、目的のページを探す。
「このページかな」
「助かる」
「授業、頑張ろう」
「ゆかの言葉が、心にしみるわ」
「大袈裟」
もしこの場にゆか以外誰もいなかったら、詩織は泣いていただろう。それほど彼女にとって、テストは酷なもの。
しかしテスト同様に数学の授業は難しく、黒板に書かれている公式をノートに写すも半分以上は理解できなかった。
それどころか教師の説明が呪文のように思え、ますます混乱する。
ゆかも何とか授業についていくも、難しいものは難しい。
思うのは、秀才の和人のこと。これを普通に理解しているのだから、凄いとしか言いようがない。同時に、尊敬の念が湧く。