これが私の王子様

(家庭科……か)

 脳裏に過ったのは、次の授業。

 だが、今は美味しいクッキー作成より、数学の授業を優先しないといけない。

 ゆかは頭を振りクッキーを振り払うと、一生懸命教師の説明を聞きノートに黒板の内容を写していった。

 15分後――

 教師の説明を遮るかたちで、チャイムの音が鳴り響く。

 堅苦しい授業から解放されたことに、生徒達は安堵の溜息を付く。また一部の生徒は、大きく伸びをしていた。

「このテストだが、次の授業の時に返す」

 勿論、生徒達の反応は悪い。

「点数に自信がない者は、勉強しておくように」

 そう言い残し、教師が退室する。

 次の瞬間、女児生徒達が騒ぎ出した。

 彼女達がそのような態度を取るのは、勿論次の授業が関係している。

 その中で落ち着いているのは詩織で、授業に使用していた一式を鞄の中に仕舞うと、ゆかに「家庭科室へ行こう」と、誘う。

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