これが私の王子様

「えーっと、この後は――」

 料理経験が殆どない詩織でも理解し易いように、ゆかは丁寧に教えていく。

 ゆかの説明に詩織は何度も頷きながら、材料を混ぜ合わせていく。途中で力の加減を間違え、四方に飛ばすのは愛嬌。

 詩織は、プレーンとチョコを使ったタイル模様のクッキーを作ってみたいと言うが、あれは難しいとゆかに却下されてしまう。

 まずは、ごく普通のクッキーを焦がさず焼けることを目標としないといけない。

「厳しい」

「このクッキーって、単位に関係しているっていうから……詩織に、失敗してほしくないもの」

「ゆか、優し過ぎるわよ」

「だって、数学のテストで……」

「うっ! 傷を抉らないで」

「だから、頑張らないと!」

「ゆかって、まさか毒舌!?」

 勿論、そのようなつもりで言ったのではないので、ゆかはキョトンっとし首を傾げていた。

 無自覚で毒を吐くゆかに、詩織は「侮れない」と、ゆかに対しての見方を改めることにした。

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