これが私の王子様

 だが、詩織の言葉で少し癒される。

「有難う」

「どうしたの?」

「ちょっと、勇気が出たかもしれない」

「そうそう、その調子。過去を引き摺ったっていいことがないんだから、今を大事にしないとね」

 同年代とは思えない立派な言葉に、詩織はジャーナリストを目指すより、電話等で悩み相談をする人の方が向いているのではないかと、ゆかは思いはじめる。

 それに詩織自身は気付いていないようだが、彼女の言葉には説得力があり、何より親身に答えてくれるから心強い。

 焼き上がるまでの間、ゆかは以前暮らしていた場所について話、一方詩織は言える範囲で自分が持つ情報を話す。

「それ、本当なの!?」

「勿論」

「詩織の情報収集能力って、凄い」

 ゆかだけには特別と言い、とっておきの情報を小声で囁く。

 それはあまりにも衝撃的だったのだろう、ゆかは何も答えられなくなってしまう。ただ言葉を詰まらせ、視線が彷徨う。
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