これが私の王子様

 一方、自分が収集した情報を自慢するかのように口許を緩める。

 恐ろしい。

 まさに、この言葉が似合った。

 十分後――

 詩織が持つ他の情報を聞いていると、オーブンから甘い香りが漂ってくる。

 ゆかは腰掛けていた椅子から立ち上がると、オーブンの中身を確認。今のところ、特に問題なく焼かれていた。

「大丈夫そう?」

「これなら、平気かな」

「今回は、ゆかがいたからよ」

「詩織も頑張ったからね」

 互いの労を労っていると、オーブンがチンっという乾いた音を響かせる。

 ゆかはふかふかの鍋つかみを装着すると、蓋を開けトレイを取り出す。その瞬間、詩織の甲高い声音が響く。

「す、凄い」

「これ、詩織の分ね」

「私が、綺麗なクッキーを焼けるなんて」
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