これが私の王子様
いつもは歪な形のクッキーを作成し、尚且つ焦がすのは当たり前。酷い場合は、炭化してしまい原型を留めていない。
しかしトレイの乗せられているクッキーは、見た目は最高だった。
「で、こっちが私の分」
オーブンからトレイが出された瞬間、詩織はその見た目に驚愕する。
ゆかが作ったクッキーは店に置かれていてもおかしくない出来栄えで、プレーンとココアの部分のコントラストが可愛らしい。
さすが、料理上手。
詩織は思わずゆかのクッキーに手を伸ばしそうになってしまうが、渡す人物がいるので諦める。
「どうかしら」
「もう、最高よ」
「本当!?」
「うんうん。これなら――」
周囲からの目線が気になるのだろう、詩織はゆかに近付くと小声で「喜んでくれるわよ」と、付け加える。
詩織の素直な感想に、ゆかの頬が微かに紅潮する。それを見逃さなかった詩織は、クスっと笑うと「プレゼントなのだから、綺麗に包装しないと」とアドバイスを送り、応援する。