これが私の王子様

 しかし対立は一向に治まらず、教師の溜息が響く。

 教師もまた、どうして彼女達がこれほど熱くなるのか知っている。

 知っているが、そのことを口にすることはしない。したらしたで、火に油を注いでしまうからだ。だから、彼女達が治まるのを待つしかない。

 教師の二回目の溜息が漏れる。

 それは、食器が割れる音の後だった。


◇◆◇◆◇◆


 詩織の予想通り、お昼休みは彼女達の黄色い悲鳴がこだます。誰もが我先にとクッキーを渡そうとするが、和人は誰からも受け取ろうとはしない。それどころか、困惑の表情だった。

 和人の横で、黙々と食事を続けているのは薫と直樹。

 一応彼等の前にもクッキーの袋が置かれているが、量は少ない。これらのクッキーは同じ部活の生徒から貰ったもので、所謂義理チョコのようなもの。

「おい、嫌がっているぞ」

 見兼ねた薫が、口を挟む。

 刹那、一斉に睨まれてしまう。
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