これが私の王子様
(おー、こわ)
本当のことを言っただけなのに、睨まれてしまうとは――恋に生きている女性は恐ろしいと、身に染みて知る。
一方、ゆかと約束しているので、和人は彼女以外から貰う気はなかった。だから丁寧に断り続けるが、集まって来た者達は和人の気持ちに気付いていないらしく、帰る気配がない。
「どうしてですか?」
「一生懸命に、作りました」
「受け取って下さい」
「お願いします」
等々、彼女達の言葉が続く。
だが、彼女達の行動は和人の心情に反するもので、言い方を変えれば一方的な行動。これで印象を良くしようとしていることが見え見えなので、逆に白けてしまう。だから、一個も受け取らない。
和人が詩織のような性格であったら、あまりのしつこさに切れていただろう。
それでも切れずに丁寧に対応するのは、和人のいいところ。それによって彼女達が増長しているのも確かで、このような攻撃は精神に悪い。それに、いい加減食事を取りたい――が、彼の本音だった。