これが私の王子様

「俺なんかより、家族に渡したらどうだ。父親とか、娘からのクッキーとか喜びそうだけど」

 しかし和人の言葉に反して、女子生徒達の反応は悪い。

 絶対に、嫌よ。

 どうして、渡さないといけないの。

 と、自身の父親について愚痴を漏らす。

 中には「加齢臭がするもの」や「汚い」など、散々な意見もあった。

 彼女達の辛辣な言葉の数々に和人は唖然とし、思わず薫と直樹を交互に眺めてしまう。すると同等の気持ちだったのだろう、彼等も硬直していた。

「酷いな」

「だって、本当だもの」

「そう言うが、和人もいずれオヤジになるんだぞ」

「結城君は、歳を取ってもかっこいいに決まっているじゃない。結城君を他のオヤジと一緒にしちゃ駄目よ!」

「そ、そうですか」

 恋は盲目。

 とは、よく言ったもの。
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