これが私の王子様
彼女達の裏の面は、すぐに見抜ける。
だから、和人は彼女達に心を開かない。
唯一彼が興味を持っているのは、水沢ゆか。彼女は他の生徒とは違い、和人が御曹司と知っても過度にアピールすることはしない。それどころか大人しく控え目で、何より料理が作れる。
どれくらい料理が上手いのか気になったので、ゆかの手作りクッキーを欲した。
しかし彼女からクッキーを貰うことは、気の置ける友人であっても薫と直樹には内緒。彼女達がどこで聞き耳を立てているかわからないので、気軽にそのことを言うことができないでいた。
「知っているか?」
ふと、食事をし終えた薫が口を開く。
「何が?」
「B組で、数学の抜き打ちテストがあったらしい」
「なら、うちのクラスもあるんじゃないか」
「そう、思うか?」
「有り得なくないね」
直樹の言葉に、薫は肩を落とす。
薫はスポーツ万能の生徒だが、勉学に長けているわけではない。といって詩織より成績が悪いわけではないが、いかんせんテスト全般は苦手であった。