これが私の王子様

 彼女達の裏の面は、すぐに見抜ける。

 だから、和人は彼女達に心を開かない。

 唯一彼が興味を持っているのは、水沢ゆか。彼女は他の生徒とは違い、和人が御曹司と知っても過度にアピールすることはしない。それどころか大人しく控え目で、何より料理が作れる。

 どれくらい料理が上手いのか気になったので、ゆかの手作りクッキーを欲した。

 しかし彼女からクッキーを貰うことは、気の置ける友人であっても薫と直樹には内緒。彼女達がどこで聞き耳を立てているかわからないので、気軽にそのことを言うことができないでいた。

「知っているか?」

 ふと、食事をし終えた薫が口を開く。

「何が?」

「B組で、数学の抜き打ちテストがあったらしい」

「なら、うちのクラスもあるんじゃないか」

「そう、思うか?」

「有り得なくないね」

 直樹の言葉に、薫は肩を落とす。

 薫はスポーツ万能の生徒だが、勉学に長けているわけではない。といって詩織より成績が悪いわけではないが、いかんせんテスト全般は苦手であった。
< 79 / 211 >

この作品をシェア

pagetop