これが私の王子様

「どうして菅生が?」

「ゆかが直接手渡したら、周りから何を言われるかわからないでしょ? だから、私が持って来たの」

「……悪い」

 周囲の状況を考えればこれが得策で、和人に熱を上げている生徒に見付かることなく、渡すことができた。

 詩織は再度、間違って渡していないか確認する。

 和人の手に乗せられている袋にはオレンジのリボンがついているので、間違いなくゆかの手作りクッキー。間違って渡してしまったら、これはこれで一大事だからだ。

 和人は袋を鞄の中に仕舞うと、詩織に態々持って来てくれたことに礼を言う。

 それに対し詩織は、これくらいは何ともないと話す。彼女にしてみれば、ゆかの手助けをしたかったからだ。

「で、菅生のクッキーは?」

「今回は、大丈夫。ゆかに教えてもらったもの!」

「以前は、酷かったらしいからな」

 和人は詩織のクッキーを食べてはいなかったが、食べた友人二人から感想を聞いているので、とんでもないクッキーということは知っている。

 和人の言葉に詩織はフンっと鼻を鳴らすと、今度は自分のクッキーを突き付けた。
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