これが私の王子様
「何?」
「感想よ」
「遠慮しておく。食べて、腹壊したくないし」
「ゆ、結城君!」
「また、あいつ等に食べてもらったらいいよ。で、水沢さんのクッキー有難う。楽しみだったんだ」
それだけを言い残すと、和人は軽く手を上げ立ち去る。
失礼とも取れる態度に詩織はムッとした表情を浮かべるも、役目を果たし終えたことにどこか安堵の表情も見え隠れしていた。
和人は学校に通い易いということで、実家から離れて一人暮らしをしている。
彼が暮らしているのは海が見える高層マンションの高層部分で、所謂お金持ちが多く暮らしている階層だった。
オートロックの正面玄関から入り、エレベーターで目的の階層へ向かう。
慣れた足取りで吹き抜けの廊下を歩き、自分が生活を送っている部屋の前に到着。いつものように鍵を開けようとするが、ふと手が止まった。