これが私の王子様

「掃除は、苦手だ」

「掃除だけ?」

「……料理も」

 祖母の鋭い指摘に、和人はタジタジ状態。

 現に和人は、家事全般は苦手――というより、最悪に分類される。成績や運動神経の方に全てのスキルポイントを振ってしまったのだろう、家事は何をやっても失敗に終わってしまう。

 理想の王子様と学校でもてはやされているが、実際はこのようなもの。

 今はハナの手によって綺麗に掃除されているが、普段はゴミが散らかっている哀愁漂う中年独身オヤジの部屋状態。

 その証拠に、部屋の隅に置かれている大きく膨らんだゴミ袋が尋常じゃない。

 どのようにしたらこれほどゴミを溜め込めるかというほど、和人は掃除の他に整理整頓には無頓着状態だった。

 それに料理が苦手なので、いつも出来合いの弁当を購入している。特に菓子パンが好物らしく、好んで食べている。

 これでは栄養面が偏ってしまい、17歳の男の子の食生活としてはよろしくない。

 祖母がいるから、何とか生きていける。

 まさに、この言葉が適切だった。
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