これが私の王子様

 項垂れている和人を元気づけようと、ハナは今日は美味しい和食を作ると約束してくれる。

「メニューは?」

「筑前煮とほうれん草の白和え。それと、けんちん汁に炊き込みご飯。あと、漬物も持って来たわ」

「おお!」

「待っていてね。すぐ、作るから」

「勉強して、待っている」

 と言い寝室へ向かうが、途中で脚が止まる。

 和人は鞄からクッキーの袋を取り出すと、祖母に見せながら女子生徒の手作りだと伝えた。

「女の子からのプレゼントなんて、珍しいわね」

「そうかな」

「昔から、断っている」

「水沢さんは、他と違うから……」

 孫の言い方に、心境の変化を感じ取ったのだろう優しい笑みを浮かべる。

 今まで異性を遠ざけ、贈り物を全て付き返していた。それだというのに、一人の女のからクッキーを受け取った。
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