これが私の王子様

 それも、きちんと名前を憶えている。

 どのような心境の変化があったのか気になるところだが、孫の性格を理解しているのであえて問わない。

 しかし祖母としては、孫が異性に興味を示したことは、大変喜ばしいこと。

 このまま上手く言ってくれたら――と願うが、変に後押しすると逆効果になることを、長年の経験で知っている。

 だから暫く、温かく見守る方を選択する。

「食べる?」

「いいの?」

「婆ちゃんなら」

「なら、お茶を用意しないといけないわね。コーヒーか紅茶。それとも、普通のお茶がいいかしら」

「コーヒーで」

「わかったわ」

 ハナは持っていたはたきをテーブルの上に置くと、キッチンに向かいコーヒーの用意をしだす。

 その間、和人は寝室に鞄を置きに行く。
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