これが私の王子様
短時間で水が湧く家電を使用しているので、すぐに水がお湯へ変化する。
二人が飲もうとしているのは、インスタントコーヒー。ハナはマグカップに粉末を適量入れると、お湯を並々と注ぎ入れた。
次に用意したのは、角砂糖にミルク。
そのふたつと熱々の湯気が立ち昇るマグカップをテーブルに置くと、ハナは椅子に腰を下ろした。
「婆ちゃん、先にいいよ」
「本当!?」
「世話になっているから」
「有難う」
ハナは和人からクッキーの袋を受け取ると、リボンを解く。
そして袋の中から一枚のクッキーを取り出すと、売り物のように綺麗に焼かれているクッキーに正直な感想を口にする。
一口齧ればほのかに甘く、老人の口にぴったり。
ハナはクッキーを好んで食べる方ではないが、この味のクッキーなら何枚も食べることができるという。
祖母の意外な感想に和人は袋からクッキーを取り出すと、一口で食べてしまう。
「美味い」