これが私の王子様
一仕事終え、和人はコーヒーを一口。
するとハナが調理の手を止め、話し掛けてきた。
「聞いているかしら」
「何を?」
「パーティーの話」
「父さんから聞いているけど」
「行くの?」
「爺ちゃんの誕生日だからね」
「よかった」
「久し振りに、話したいし」
「喜ぶわ」
それを聞いて安心したのだろう、ハナは手際よく野菜を切り揃えていく。
これも長年料理を行っているからだろう、動きに無駄が感じられない。それに同時進行で、幾つもの料理を作っていた。
祖母からの質問に、和人はパーティーについて考える。
今回のパーティーというのは、和人の祖父史武(ふみたけ)の誕生を祝うものだ。
史武は第一線を退いているが、今も絶大なる権力を有している。多くを語ることはないが、政界人や企業人が日参する存在らしい。