これが私の王子様

 一見、好々爺という言葉が似合う。

 しかし怒らせると、これ以上の存在はいない。

 といって、史武は和人にとっては優しい祖父。

 毎年、夏休みの期間和人は祖父母の家に行っては、長期滞在をしている。

 そこでは祖父の畑仕事を手伝ったり、一緒に川に釣りにも行く。それに夏祭りの縁日も、いい思い出である。

 仕事が忙しい両親に代わって、小さい頃から面倒を見てくれたのが祖父母。

 だからこそ祖父の誕生日パーティーの日はきちんと予定を開け、この日は何があってもこちらを優先する。

 だが、唯一不満もあった。

 祖父のパーティーには、多くの人が集まって来る。

 その中に、厄介な人物も含まれる。

 厄介な人物というのは、和人が私立から公立に移った原因を作った者達。

 学校では薫と直樹がいるので軽く受け流すことができるが、パーティーの時は二人がいないので苦痛しかない。

 だからといって、不参加はしない。

 これも、祖父の為である。

 コーヒーを片手に暫く考え事をしていると、煮物の匂いだろう食欲をそそるいい匂いが鼻腔を擽る。
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