これが私の王子様

「……腹減った」

「まだよ」

「勉強してくる」

「できたら、呼びにいくわ」

「わかった」

 空腹の中で勉強できるかどうか怪しいが、いい匂いを嗅ぎながらこの場所にいる方が何倍も辛い。

 和人は部屋に戻り、制服から私服に着替える。

 その途中、スマートフォンが鳴った。

 着信の主は詩織で、メールの返信だった。


 クッキー、そんなに美味しかったの!?


 それが、最初の文章。

 異性の料理に見向きもしなかった和人が、クッキーひとつでゆかの料理に興味を示すとは、流石の詩織も驚きを隠せないでいた。

 それでもゆかの応援したい詩織は、快く了承してくれた。
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