これが私の王子様

 詩織の気遣いに、和人の表情が綻ぶ。

 異性関係に疎いので、和人が行動に出れば面倒なことになってしまう。だから、後のことは詩織に任せれば大丈夫。

 そう判断した和人は詩織宛てに感謝のメールを送信すると、スマートフォンを机の上に置く。

 和人は椅子に腰掛けると、鞄から数冊の教科書を取り出す。

 これから行うのは、今日の復習と明日の授業の予習。

 和人は特に苦手な教科はないが、直樹と学年トップを争っているので、少しの油断で負けてしまう。

 だから、日々の勉強は欠かせない。

 教科書とノートを開き、ペンを進める。

 その間、部屋に響くのはペンの音。

 流石秀才と呼べる人物か、ノートには次々と文字と数字が細かく書き込まれていく。

 和人にとって勉強は苦ではなく、中間・期末テストの数週間前から、徹夜で勉強を行うことが多い。

 ある意味、これが日常の一部といっていい。

 その後、黙々と勉強を続ける。

 一体、どれくらい時間が経過し頃か――

 腹の音によって、ペンが止まった。
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