君のための唄。
今日も同じように歌っていた。

相変わらず、誰も俺たちの前にはいない。

時々、疲れきったサラリーマンが

「五月蝿いな」という風に俺たちに眉間にシワを寄せた顔を向け

通り過ぎていった。

気にせず俺は歌い続ける。

ふと、一人の女性が足を止めた。

髪が長く、色の白い女性だった。

誰が見ても『綺麗だ』と言うだろうその女性は

切ない顔で俺の歌を聴いていた。

今日、俺の歌を聴いた、唯一の人だった。
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