読心女子≠恋愛上手<お悩み二乗はπ
第13話
一時間後、一限目が終わり小休憩に入ると知世は愛美のクラスへと向かう。逃げずに昨日の報告をしようと決心したからには善は急げで即行動する。教室の前に来ると廊下には孝太が立っており教室内の様子を窺っている。予想はつくもの知世は話しかける。
「こんにちは、相楽君」
「あ、楢崎先輩こんにちは」
「愛美はいる?」
「いえ、それが居ないみたいで」
孝太の回答を受けて訝しがると何の躊躇もなく教室に入っていく。孝太と違い毎日行き来しているクラスなだけあって他の生徒も知世を気にする素振りはない。自分の後ろを申し訳なさそうについてくる孝太に微笑み、愛美の座席へと案内する。いつも机の横に提げている鞄も見当たらず登校してない可能性が高いと分かる。
「ここが愛美の席なんだけど、この感じ、たぶん学校に来てないね」
「そうなんですか、もしてして、僕のせいですか?」
「いやいや、普通逆でしょ。失恋した方が学校休むって」
(って、失恋した私が言えた義理もないか……)
「なんだろね。ちょっと電話してみる」
ポケットから携帯電話を取り出すと履歴から通話ボタンを押す。しかし電源を切られており全く繋がる気配がない。
「やっぱおかしいわ。電源切ってて出ない」
「何かあったんじゃないでしょうか? 例えば通学中に事故に遭ったとか」
「ちょっと、縁起悪いこと言わないでよ。心配になってくるでしょ?」
「すみません」
「でも、今までこんなことなかったし変ちゃ変なのよね。どうするべきか……」
(もしかして、風邪で寝込んでるとか? だとしたら、家は知ってるけど家の電話番号は知らないし確認のしようが……)
考え込む知世を孝太も心配そうな顔で見つめる。教室の後方を見ると啓介と友人たちがゲームしており、その姿を見ると知世の心がズキリと痛む。
(啓介君……、どんなに好きでも想いは伝わらないんだよね。辛いな……)
涙腺が緩みそうになるが気を取り直して愛美のことを考える。そして、啓介の言動を思い起こした瞬間気が付く。
(啓介君なら自宅の番号を知ってる可能性が高い!)
閃くと一直線に啓介の元に向かい問いかける。
「啓介君、忙しいところごめんなさい。もしかして、愛美の自宅の電話番号を知らないかな?」
その差し迫った表情を見て啓介はすぐにゲームを中止する。
「アイツに何かあったのか?」
「連絡取れない。学校にも来てない」
「分かった、おばさんに聞いてみる」
そういうと携帯電話を取り出しすぐにコールする。
「もしもし、伊藤です。先日はありがとうございました。はい、ところで愛美さんは居ますか? えっ、そうですか分かりました。失礼します」
通話を終えると啓介は知世を向く。
「今朝も普通に家を出たらしい」
「それで携帯の電源も切ってるっておかしくない?」
知世の言葉を聞き啓介だけでなく孝太も険しい顔をする。
「おそらくだけど、そう遠くには行ってないと思う。アイツは昔から方向音痴だし、学校の最寄り駅周辺、もしくは駅から近い繁華街。探すならそんなところだな」
「分かった。私探してくる!」
「僕も先輩にお供します」
啓介の返事も待たず二人は教室を急いで出て行く。啓介は何か言いかけていたが諦め、少し考えた後もう一度携帯電話を取り出した。