読心女子≠恋愛上手<お悩み二乗はπ
第14話
「GPSだ」
どうしてこの場所を知ったのかを問われ啓介は答える。
「本来電源が切れていると追跡不能な機能だけど、最終的にどこで電源を切ったのかは調べられる。電源を切ってから家を出てたらアウトだったけど、おばさんに調べて貰ったら幸いこの駅って分かったからな。後はこの駅周辺を人海戦術」
「人海って……」
聞いた瞬間、視線の先に走ってくる知世と孝太が目に入る。さらにその後ろには里菜と詩織も見られる。
「もしかして、みんな私の事を?」
「ああ、発起人は楢崎さんだけどな」
啓介から真相を聞くと申し訳ない気持ちになる。その一方、知世の名前が啓介から出るとドキリとする。目の前の啓介はマフラーをしておらず、直接聞くしか真相を知る由もない。そうこうして考えているうちに知世が駆け寄り啓介を押しのけ正面から抱きしめてくる。
「マナ! 心配かけさせないでよ!」
「トモ……、ごめん」
「もう……、バカ!」
責めながらも泣いている知世を感じて愛美も泣きそうになる。見守る他のメンバーは笑顔で二人を見つめている。しかし、里菜や孝太はともかく、ほとんど交流のなかった詩織まで居ることに疑問を覚える。目線が合うと自然と心の声が流れてくる。
『何もなくて良かった。これからが本番なのに居なくなられたら困る』
(えっ? どういうこと?)
詩織の思考を読み一瞬意味が分からなくなるが、知世が割って入り読心術がカットされる。
「二人だけで話がしたいから、ちょっといい?」
「え、うん、いいよ」
「ありがと」
知世は他のメンバー全員にお礼を言い学校に戻るように宣言する。他意もなく解散となり二人きりになると知世はすぐさま切り出す。
「私、啓介君に昨日告白した」
「そ、そう」
(やっぱり告白の話か……)
予想はしていたものの覚悟を決めて耳を傾ける。
「で、フラれた」
この言葉を聞いてホッとする自分と知世の傷心を想う自分が現われ心が痛む。それと同時に麻耶が言っていた通り緑色のマフラーがどういう経緯で啓介の首に巻かれているか疑問が湧く。
「私の勘だけど、たぶん……、やっぱいいや。そういうことだから、私は戦線離脱。愛美の健闘を祈るよ」
『あくまで推測だし、啓介君自身がまだ自分の気持ちに整理をつけられていない可能性もある。脈アリ的なことを言うより、二人の成り行きに任そう』
(脈アリって、もしかして啓介。私を理由にトモを振ったとか? だとしたら両想いってことに……)
知世の思考を読み、間接的に啓介が自分を意識していることを知った愛美の鼓動は再び早くなっていた。
帰宅後、リビングで寛ぐ真由美からは何のお咎めもなく、風邪に気をつけるようにとだけ言われる。気を遣ってくれていることに嬉しくも申し訳ない気持ちになり、また涙腺が緩むがコタツ机にある物体が目に入った瞬間、急いで詰め寄る。
「ちょっとお母さん! それ何!?」
「ん? それって?」
「それ! コタツの毛糸!」
「ああコレ。コタツの横に転がってたからありがたく使わせてもらいました」
「いやいや、それ私のですけど」
「あっそう、もうね、だいぶ使っちゃった。てへぺろ」
「全く可愛くないし、悪びれる様子もなしって……」
「まあまあ、怒りなさんなって。この毛糸で作ったマフラー。好評だったのよ?」
嬉しそうにそう言い放つ真由美を見て愛美の中に名探偵が現われる。
『限定色の毛糸取られる→母マフラー作る→啓介が貰う→愛美勘違い』
(犯人は家の中に居たーーーー!!)
引きつった顔をし呆然と立ち尽くす愛美を無視して、真由美はマフラーの出来がいかに良かったかを力説していた。