悲愛日記
葉月くんとクラスの男子が同じ曲を歌って罰ゲームをかけ。点数を競い合っていた。
ちなみに葉月くんは意外なことにも音痴だった。
でも勝負している男子も葉月くんに劣らず音痴なので、今のところいいとこ勝負。
次の曲で勝敗が決まるんだけど……。
僅かな差で葉月くんが負けてしまったのだ。
すごい隣で悔しそうにしている。
でも、音痴なんてギャップが凄い。
……ちょっと可愛いなんて思ったのは内緒。
でも私もそんな呑気にしてはいられなかった。
「じゃ、祐(ゆう)の罰ゲーム発表しまぁーす!」
あぁ、そう言えば葉月くんの下の名前って祐だったよなぁーって思っていたとき。
「祐は伊東ちゃんのこと“莉子ちゃん”って名前呼びな!」
思わず、一瞬理解できずに固まってしまった。
………へ?
「……え、は?」
そして同じように葉月くんも戸惑っているみたい。
この部屋にいる全員の視線が刺さっているようで、なんか痛かった。
「はい、もう決定事項だから!さぁ、祐。呼んでー!」
そしてまさかのコールがかかってしまう。
「「「よーべ!よーべ!」」」
思わず葉月くんと目を合わせてしまった。
……葉月くん、どんな反応するのかなって。嫌じゃないのかなって思った時。
葉月くんが照れくさそうにふわりと笑った。
そして_______。
「莉子、ちゃん」
小さい声だったので、周りのコールにかき消されてしまったけど…。
確かに私には届いた。
ヒュッと喉が小さくなった。
そしてこの時思った。
あぁ私、葉月くんの事好きなんだ。
カッコよくて、性格がよくて、明るくて、優しくて、出会って2週間の葉月くんに。
私、落ちちゃった。
私の名前をよんだ葉月くんの声に、呼んでくれた後の少し照れたようにはにかんで笑った葉月くんに。
俯かずに、私も同じようにはにかんで笑ってみた。
……うわ、どうしよう。
私_______初恋だ。
初めての恋にいろんな感情がぐるぐる混ざっていたけど、でも何か嬉しかった。