悲愛日記
「はい、呼んで」
いや、そんなハイハイ言えないって。
でも葉月くんは莉子って呼んでくれてるわけだし…。
私も呼びたくないわけではない。
もんのすごく恥ずかしいだけだ。
……一回だけなら。
そう思った私は恐る恐る口を開いた。
「……ゆう……くん」
顔から火が出るほど恥ずかしい思いをしたのに、葉月くんはまだ真顔のままだ。
「だーめ。祐。はい、もう一回」
いーーーやーーーー。
見つめあっているから、もっと照れる。
「……ゆ、う」
「はい、今度はちゃんと」
葉月くん、すごいスパルタだ。
無表情だった顔だったけど、葉月くんは薄らと口元を上げて笑みを作った。
たまにしか見せない意地悪な笑み。
この笑顔は、私は苦手だ。
カッコいい葉月くんが更にカッコよくなるんだもん。
だからそんな顔をされたら私は頑張るしかないわけで。
「……祐」
やっと、言えた。
すると今度はにっこりと笑ってくれる葉月くん……もとい、祐。
「よく出来ました」
そう言って子ども扱いするように頭を撫でてくれた。
あぁ、もう。
何でこんなに恥ずかしいの。
何でこんなにかっこいいの。
何でこんなに愛しいの。