LB4
ここで始業のベルが鳴る。
「おはよーう」
開けっ放しの扉から担任の藤川(ふじかわ)が教室に入ってきた。
2年の時もこいつが担任だったから、もう顔を見飽きてしまった。
途端にクラスがガタガタ騒がしくなる。
恭子と織恵も短いスカートを翻し、各々の席へと戻っていった。
今日も一日、学校が始まる。
学校は嫌いじゃない。
友達と会えるし、授業もつまんなくはない。
私立に比べて制服が地味なのは不満だけど、着崩してもそこまで怒られないから別にいい。
引退したバスケ部だって、とても楽しかった。
入学以来、充実した2年半だったと思う。
だけど、あたしの高校生活には何かが欠けている。
そう、恋愛だ。
誰と誰が付き合っている。
この間あの先輩が彼女とキスしてるの見ちゃった。
最近あの子、とうとう彼氏としたらしいよ。
あいつ、彼女いるのに、この間他校の女と歩いてたぞ。
全ての話題があたしにとっては他人事で、でも興味はあって、だからゴシップとしてそれなりに楽しむ。
恋愛はいつだって話題の中心だ。
でも、だからって……。
『女子高生のうちに脱処女してないと負け組』
『モテない恋愛不適合者』
そんな風潮を作ったのはどこの誰だろう。
真に受けているわけじゃないけど、軽いコンプレックスくらいにはなる。
だってこの風潮のせいで、右隣にいる田中にすらバカにされているのは確かなのだ。