LB4
「おーい江頭(えがしら)、聞いてるか?」
「へ?」
急に私の苗字が聞こえたから、驚いて素っ頓狂な声を上げてしまった。
全然聞いてなかった。
藤川が呆れた顔をしている。
「目が覚めてないようだな。よし、お前これから職員室に来い」
「えっ? なんで?」
「目が覚めるような雑用を押し付ける」
「えーっ、またぁー?」
クラスがどっと沸く。
あたしは諦めのため息をついて、席を立った。
藤川について仕方なく職員室へ向かった。
「お前さー。落ち込むのはいいけど、もっとひっそり落ち込めよ」
「そんな余裕ないんだもん」
担任だからって偉そうに説教かよ。
まだ若いくせにオヤジくさいな。
あれ、29って言ってたっけ?
そう考えたら結構オヤジじゃん。
教師って、髪型とか着てる服がイケてるだけで若くカッコ良く見えるから、騙されるとこだった。
藤川は歩きながら、淡々と説教を続ける。
「みんなにわかるように落ち込む女って、みんな私のこと慰めてーっていうアピールみたいで結構イタいぞ」
「はぁっ? なにそれ! 別にそんなつもりなかったし!」
「つもりがなくても、周りはそう思う。だってガキくさいだろ。痛いよ苦しいよ悲しいよーって言ってるヤツ。苦しくても一人で堪えるのが大人のイイ女ってもんだよ」