LB4

それは恋人でなくても、職務中に芽生えた欲を満たし合っていいという免罪符。

職務に支障を来さないクリーンな精神状態を保つためには、そういう便利な愛の制度がないと負担になって仕方がない。

だけど実際、そんな便利な制度は存在しない。

可愛い後輩としてではなく一人の男として向き合う以外に、このモヤモヤを晴らす術はないのだ。

非常に厄介。

「戻りました」

「おかえり」

私たちの間に漂う湿っぽいけれど色っぽい空気が、コーヒーの香りを纏って少し煮詰まる。

「あんたさぁ」

「何ですか?」

「あたしのどこが好きなの?」

板東はいつかのように呆れた顔をして、パソコンを引き寄せ仕事に戻るそぶりを見せた。

「そんなの、教えませんよ」

「ケチ。じゃあ、いつから好きなの?」

「入社してわりとすぐの頃からです」

もう2年も前じゃないか。

当時は毎日私に怒られていたはずだ。

それなのに好きになるなんて、やっぱりそういうのが好きなんだろうか。

「あたしが男と別れたらどうする?」

「えっ……?」

表情がバレないよう、私は図面で顔の下半分を隠した。

目線だけ板東に向けると、彼は前のめりになって立ち上がる。

「別れるんですか?」

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