LB4




私より4年後れて入社してきた板東(ばんどう)は、清潔感の塊のような男である。

細身の体にシワのないシャツを纏い、色白の肌は触りたくなるほど滑らか。

あらゆる所作が美しく、笑顔は誰より爽やかで、物腰も柔らかい。

目鼻立ちも女が嫉妬してしまうほど整っているのだが、移動時の列車でうたた寝をするときの顔すら芸術的だから腹が立つ。

すべてが作り物のようで胡散臭いと感じるのは、彼の美を疎ましく思っているからかもしれない。

どうせ中身は歪んでるんだろうと思いきや、比較的裕福な家庭で真っ直ぐに育った彼は、気持ち悪いくらいに正直で素直で真面目だった。

ミーハーな女子社員たちは、そんな彼を「王子」とはやし立て、下心を持って寄ってくる。

しかし彼はそういうのが苦手なようで、彼女らの誘いを上手にかわす。

「モテモテじゃん。よかったね」

と嫌味を言えば、必ず

「嬉しくないです。変な期待されてるみたいで、怖いんですよ」

と困った顔をする。

入社以来、浮いた話も聞かない。

他の男性社員からのいかがわしい誘いにも乗らない。

スキャンダルレスのクリーンマン。

人間味がないから、かえって不気味だ。

こいつにはきっと、性欲すらない。

私にはそう思えてならなかった。

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