LB4
俺はいわゆる、ゆとり世代の申し子だ。
大学を卒業するまで何不自由なく、ゆとられにゆとられて生きてきた。
中学受験をして、そこそこ名のある私立校に入学してからは、大学までエスカレーター式。
勉強して、部活をして、バイトをして、恋愛をして。
暑苦しくなければ、冷えきってもいない。
楽しくて充実した、ぬるい学生時代を送った。
就職活動も、研究室の推薦で今の会社を受け、あっさり終了。
この会社に入るまでは、本当に平和に暮らしてきたのだ。
自分たちが「ゆとり世代」と呼ばれてバカにされていること。
その期待を裏切らず、甘やかされて育っていること。
そして、社会はそんな自分達が想像している以上に不自由でシビアな世界だということ。
よく聞いていたし、頭ではわかっていたつもりだった。
社会人になったら、残業代もまともにもらえず上司に夜中までこき使われて、プライベートなんてほとんどなくなるんだ。
先輩から「これだからゆとりは」って陰口叩かれるんだ。
などと、ぼんやり覚悟してはいた。
楽しいモラトリアムを終え、大人として、荒波に揉まれる辛い一生が始まったのだと。
俺の教育係に任命されたのは、当時入社5年目の相澤さんだった。
パンツスーツに高いヒールのパンプス。
長い髪はキュッとひとつに結ばれていた。
眉がキッと凛々しくて、美人。
ピカピカの新入社員だった俺は、男心に喜んだ。
キレイな女の人なら、優しく教えてもらえそうだと。
しかし、それはとんでもない勘違いだった。