LB4
大学の2つ上の先輩、板東さんを好きになったのは、もう4年も前のこと。
一目見た瞬間、私は彼を王子様だと思った。
美形で、肌も髪もピカピカで、癖のないファッションで、賢くて、優しくて、いつも笑顔。
当然人気者で、彼を気に入ったという理由でサークルに入った女子は数知れず。
私もそのうちの一人だった。
ライバル多数。
よって先手必勝。
「私、板東さんのこと好きです!」
しかし……
「ごめん。俺、彼女いるんだよね」
あえなく撃沈した。
だけど、そんなの想定内。
イイ男に彼女は付き物だ。
この程度じゃ引き下がらない。
「浮気相手でも何でもいいです。近くにいさせてください」
それまでは、これで大体懐に入ることができた。
でも。
「そういうのは好きじゃないんだ」
え?
「じゃあ、一回だけでも」
「ごめんね、無理」
え? え? え?
無理って何?
あなたのためにタダでこの身を差し出すと申し出ているのに?
男なら、一回くらいならって鼻息荒くして食らいつくところなんじゃないの?
この人、性欲ないの?
もしかしたら本物の王子様かもしれない。
ファンタジーの世界の人なのかもしれない。
板東さんのズルいところは、女として見てくれないかわりに、後輩としてはしっかり可愛がってくれるところだ。
その優しさでたまに勘違いできるから、なかなか諦めきれない。
そういう意味では、悪い男だと思う。
「彼女と別れたって聞いたんですけど」
「ああ、うん。でも新しい彼女いるから」
彼は別れてから次に行くまでのインターバルが短かった。
さすがは王子様。
何人もの女に囲まれていて、常によりどりみどり。
ちょいとエサを撒けば一気に群がってくる。
あとは気に入った子をひょいとピックアップすればいいだけである。
私も必死に腕を伸ばしていたけれど、私の手を取ってはもらえなかった。