LB4



板東さんが卒業し、社会人になってすぐの頃。

「卒業と同時に別れたって聞きました。今度こそ、私と……」

付き合ってとまでは言わない。

せめて報われたという思い出をちょうだいよ。

しかし彼は笑顔であっさり告げる。

「ごめんね」

「私じゃダメなんですか?」

こんなに長く粘っているんだから、一度くらい私を選んでくれてもいいじゃない。

しつこく粘ってやろうと思っていたけれど、この日の板東さんはいつもと違った。

照れた顔でこう告げたのだ。

「俺今、すごく好きな人がいるんだ。片想いなんだけどね」

驚いた。

ずっとモテてきた板東さんが、片想いだなんて信じられない。

でも、これはチャンス?

「だったら、私が」

「千佳ちゃんをそういうふうにしたくない」

板東さんは優しい。

決して私じゃダメだとは言わないし、後輩としてはめいっぱい可愛がってくれる。

でも、恋愛対象としては見てもらえない。

私だってさすがに、脈のない板東さんだけに目を向けていたわけじゃなかった。

バイト先で一番カッコイイ先輩。

学部で一番カッコイイ男子。

新しいバイト先のイケメン店長。

友達の友達。

好きになった人は他にもいた。

彼らとは何度かデートして、何度かセックスして、いつの間にか終わった。

平たく言うと、浮気相手か繋ぎの女にしかなれなかった。

なんでだろう。

どうして彼氏になってくれないのだろう。

私はただ幸せになりたいだけなのに。

そのためなら身体なんていつだって差し出せるのに。

そこそこ可愛いのに。

愛嬌だってあるのに。

料理だってできるのに。

どうして私じゃダメなのよ。

悪いところがあるなら直すから。

重くならないように、嫉妬しても我慢するから。

エッチな要求にだってできる限り応えるから。

だから。

私を彼女にしてくださいーー……。



< 66 / 180 >

この作品をシェア

pagetop