LB4
翌朝、いつもより少し早めに出社した。
私の方が早いと思っていたのに、早川先輩はすでに急がしそうに事務処理をしていた。
邪魔する私のせいで思うように処理できず、溜まってしまった仕事を片付けているのだと、初めて気付く。
「おはようございま〜す」
彼女の視線がこちらを向いた。
その目力から意図していることが伝わってきたので、いったん言い直す。
「……おはようござい、“ます”」
「……おはよう」
まだメイクしたてで、ファンデのヨレも唇のシワもない、ちょっとキレイな早川先輩。
私は一度自分の席に腰掛け、少しドキドキしながら椅子のキャスターを転がし彼女に近づいて、他の社員に聞こえないボリュームで話しかける。
「先輩、城山さんと付き合ってるんですってね」
「えっ、なんで千佳ちゃんが知ってるの?」
「ご本人に聞きました」
「あいつ……!」
先輩は手で頭を軽く押さえ、少し照れた顔をした。
「営業所で一番のイケメンをゲットした先輩に恋愛相談がしたいんですけど、今日お時間頂けませんか?」
私がそういうと、早川先輩は心底驚いた顔をして、しかし声は小さく抑える。
「え、私に? 無理だよ、無理無理。相談されても何も答えられない」
「お願いします。先輩以外に相談できる人いないんです」
朝からコソコソ盛り上がる私たち。
続々と出社してくる他の先輩社員たちは、物珍しそうに私たちの様子を見ては、
「あの二人、やっと仲良くなったんだ」
と微笑んでいるように見えた。