T&Y in神戸
ジジイと岸と共に最上部の執務室に向かう為、エレベーターに乗り込むと直ぐに。

「明日、出発か。」
と口を開いた。

たかが一泊の旅行。
そっと出来ないのかと溜め息が出る。

「そう、嫌な顔をするでない。」
そう言いながらニヤニヤするこの顔を見ると何だかムカつく。

「由香利が、楽しみにしておる。」

と、由香利と同じ黒目勝ちな瞳を細めた。

期待を裏切れないプレッシャーをかけたいのか、それともーーー…

「行き先、決めておるか?」
「……特には、」
聞いてどうすると、警戒感が強まる俺の気持ちを無視して、ジジイはうんうんと頷きながら、

「神戸は不死鳥の街。活気と勢いがある。
何処に行っても楽しかろうよ。」

“不死鳥”とは、先の震災からの復興を指しているのだろう。

「ーーーはい。」

素直に頷けば、ニヤリと笑って、
「ふたりきりで楽しく無いわけ、ないかの。」
ふぉっふぉっふぉと狭いエレベーターに高笑いが響いた。


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