王様の友達
「やっぱばかだね王様」
「はぁ?!」

相変わらず失礼な奴だな。むかつく女だ。

「なんで嫌な奴演じちゃうのかね」
「演じてない。ああ言ったほうが悔しくてよけい頑張るだろ」
「へー」
「俺は策士だからな」

「ぶっ」

そこは吹き出すところじゃないだろう。空気の読めない女め。
でもけたけたとおかしな声で笑うその姿になんだか胸が温かくなる。こいつだけだ、俺の前でこんな風に笑うのは。

「そんなに見てどうしたの。やっぱ欲しい飴?」

飴を俺に押し付ける。その時にとよこの長い髪が俺の肩に触れる。綺麗に茶色く染まっている。

「王様?」

このにおいはとよこだ。

顔に熱が集まる。なんだこれはっ!動悸が激しくなって呼吸がうまくできない。

「いらないと言ってるだろうっ」
「うわっ」

飴をとよこに投げつけて屋上から走り去る。
なんだこれはっ、こんなのは知らない。俺がとよこに持つ感情なんてむかつきだけだ。

……なんで俺はとよこにむかつくんだ?

だってあいつは俺を褒めない、媚びない、下心のある手で触れてこない。
俺の名前を呼ばない。
俺を侮辱する。


俺の彼女になろうとしない。


「なんだよ」


むかつくのは俺ばかりがとよこを好きだからだ。



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