きみのふいうち
早くこの場から立ち去ろうと、出口を塞いでいたテーブルの横にあるパーテーションに手をかけたと同時に、待って、と焦ったような声で引き留められた。
「ホントごめん。こんなふうにしつこく聞かれて、気分いいわけないよな」
「違うよ、本当に全然気にしてないから。だから……、手、離して」
呼び止められたときに暁くんも立ち上がっていて、それと同時に掴まれた、パーテーションに触れたのとは逆の手。
これ以上ないと思っていたのに、わたしの中で渦巻く感情の波が更に勢いを増して、今にも溢れてしまいそうだ。
パーテーションで仕切られているとはいえ、声は筒抜け。
それは感情に昂ったわたしの頭でもわかったから必死で声を抑えたら、言葉とは裏腹に怒っているような声が出て、しかも涙をこらえるように語尾が震えてしまった。
「え……、泣いてる?」
「ち、ちがう。泣いてない」
「でも」
ぐいっ、と掴まれた手首に込められた力が増して引っ張られたかと思うと、一歩、後ろに体が傾いた。
思わず暁くんのほうを見ると、苦しげに眉根を寄せた暁くんと目があった。