きみのふいうち

ぽつり、と思わず零れた言葉。
ああ、と思った。
ひとつ零れてしまったら最後、全部零れ落ちてしまうような気がする。

「え?」
「わたしのことなんて、ほっといてよ。そもそもわたしが桐原くんと付き合ってたら何だって言うの。わたしが誰と付き合おうと暁くんには関係ない」

ダメだった。
やっぱり、止められなかった。
よりによって1番言いたくなかったことを言ってしまった。

関係ない、なんて。
たとえ友達相手でも、こんな悲しい言葉、言いたくなかったのに。

なんて、頭でははやくも後悔しているのに、心は感情を抑えられなかった。

暁くんは驚いたように目を見開いて、そしてショックを受けたように目を伏せる。

それでもわたしを掴む手をはなしてくれない。
< 66 / 91 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop