きみのふいうち
「……」
痛いような沈黙の末、先に口を開いたのは暁くんだった。
伏せていた視線を上げた暁くんの瞳は、先程まで伏せられていたのが嘘みたいに強くわたしに向けられている。
「……関係ないなんて言わないでほしい。俺には花南さんを放っておくなんてできない」
痛みをこらえるような声で言われて、胸が強く締め付けられる。
……わたしのことなんて、気にしなくていいのに。
ただの同期に、そこまで肩入れしなくていい。
期待してしまうような優しさは、わたしにとってはつらいだけだよ。
「同期だからって、そんなに気にかけてくれなくていいよ」
「放っておけない理由が同期だからだなんて言ってない」
即座に否定されて戸惑う。
こんなふうに強い口調で話す暁くんは、見たことがなかった。
「俺がこんなふうに花南さんに構うの、同期だからって理由だけだって、本気で思うの?」
「え……」
思いがけない問いを投げ掛けられて、わたしはおそらく今、相当困った表情をしていると思う。
だって、もうさっぱり理解が追い付かない。
ひどいことを言ってしまったせいで、嫌われて突き放されるかと思ったのに、そんな雰囲気でもないし。
全く想像もしてなかったような質問をされているし。
わたしと暁くんのいちばん強いつながりって、同期っていうことだよね?
わたしから暁くんに向かう想いはそれだけじゃないけれど、暁くんにとってわたしを気にかけてくれる理由なんて、やっぱりそれしかないと思う。