きみのふいうち
……だめだ、わかんない。
これ以上考えたところで答えは出そうにないし、そもそもこんな質問に何の意味があるんだろう。
暁くんがわたしを気にかけてくる理由が同期だからという以外にもあったとしても、それがわたしから暁くんへ向かう気持ちと同じものであることは絶対にないんだから。
聞いたって、悲しくなるだけに決まっている。
「……他に理由があるんだとしても、やっぱり暁くんにはわたしの彼氏が誰であろうと関係ないよね」
つとめて静かな口調でそう言った。
すると暁くんは、傷ついたような目でわたしを見てくる。
きっと、わたしがこんなことを言うなんて想像もしてなかったんだと思う。
自分でも驚いている。
こんなにきつい言葉を口にしていることに。
暁くんは、きゅっと唇を真一文字に結んで、痛みをこらえるような表情をしていたけれど、やがて静かに口を開いた。
一度、まばたきをした暁くん。
再びわたしの目をまっすぐ見据えてきた瞳からは、先程まで浮かんでいた痛みの色は消えていた。
「……それは、そうだね。花南さんの彼氏が誰であろうと、俺に口出しできる権利なんかないよ」
暁くんの声はとても静かで、だけど強い響きを持っていた。
ぎゅ、と手首を掴む暁くんの力が強くなって、それと同じようにわたしを見る視線の強さが増したような気がする。
その視線にとらわれてしまったように、わたしは暁くんから目を逸らすこともできない。
「でも、だからって引き下がれない」