きみのふいうち

「でも! 大学のときから付き合ってる彼女がいるんだよね?」

動揺してたずねる。
たまに飲み会なんかで話題にあがっていたよね?
そのたびに、暁くんは少し照れながらのろけていたんだ。

「大学のときに付き合い始めた彼女とは去年別れて、もう1年以上たつよ。俺、花南さんに別れたって言わなかった?」

「聞いてない……」

たしかに、そう言われてみれば最近は暁くんから彼女の話を聞いていなかったような気がしないでもない。

じゃあ、暁くんは本当に1年もフリーだったってことなの?

彼女がいるからって、なんとも思っていないふりをしていた、わたしの努力は一体なんだったの……。

「信じない」

「え」

きっぱり言ったわたしに、暁くんは驚いたように目を見開いた。

だって、いきなりこんな展開、頭が全然ついていかない。

……暁くんの言葉は冗談なんかじゃないって信じたいのに、長年の思い込みってこわいなぁ。
自分に暗示をかけてしまっているみたいに、頭がどうしても受け入れてくれない。

「わ、わたし、もう戻るからっ」

暁くんが驚いている隙に、つかまれていた手をふりほどいて、ミーティングスペースを足早にあとにした。
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