きみのふいうち
「花南ちゃん、暁となんかあったの?」
「え?」
他のメールを確認していると、ふいに斜め向かいの席から話かけられて、間抜けな声が出てしまった。
話しかけてきたのは、暁くんの隣の席で、1年目のときは暁くんの教育係を担当していた先輩だ。
「えっと……?」
内心ぎくりとしながらも、わからないふりをして首をかしげると、先輩は苦笑をこぼした。
「ゴメンゴメン、何もないならいいんだけど。暁、さっきのメール送るのにびっくりするほど時間かけてたみたいだから、どうしたのかなって思ってさ」
「そ、そうなんですか。わたしとはとくに何もないですけど……、どうしたんですかね」
我ながら見事な棒読みになってしまった。
先輩も、きょとんとした顔でわたしを見る。
「……花南ちゃん、嘘つくの下手って言われない?」
「あはは……」
苦笑したわたしに、先輩は小さく息をついて、笑う。
仕方ないなぁ、って心の声が聞こえてくるようだ。
「なにがあったか知らないけど、言いたいことがあるなら早めに言った方がいいよ」
「先輩……、エスパーですか」
あまりに的確な助言が飛び出してきてびっくりだ。
わたしのびっくり顔のツッコミに笑いながら、先輩も外回りに出掛けていった。