きみのふいうち
「戻りました」
暁くんが外出から戻ってきたのは、2時間ほど経った11時前だった。
すでに資料をまとめ終えていたわたしは、席についた暁くんのところに持っていく。
「外回りおつかれさま。頼まれてた資料、まとめたから確認してもらえるかな? 問題なかったらこのまま印刷する」
「おお、早い。ありがとう、すぐ確認する」
暁くんは鞄をデスクの上におきながら、わたしが差し出した資料を受け取った。
近づくと、スーツの肩口や髪が少し濡れていることに気付いた。どうやら外は雨が降っているらしい。
「雨降ってるんだ」
「あ、うん、さっき降ってきて。風が強いからちょっと肌寒かったよ」
「そっか。……コーヒー入れてこようか?」
「え」
わたしの言葉に、暁くんはなぜか驚いたようだった。
一瞬目を見開いて、そしてすぐに小さく笑う。
「……ありがとう。お願いします」
「? うん、待っててね」
なんで驚いていたんだろう?
わたしは首をかしげながら、ついでに自分の飲み物も入れようとデスクの上のマグカップを持って、給湯室へ向かった。