きみのふいうち

スマホを見ると、まだ待ち合わせまで15分くらいある。

暁くんが来たらと思うとドキドキしすぎてどうにかなってしまいそうで、まだ来ないでと思う。

だけど一方で、この持て余した時間もつらくて、早く伝えてしまいたい、という相反する気持ちも同じくらいあって。

こんなことなら、ギリギリまで仕事をしていればよかった。
急ぎじゃないような雑務ならたくさんあったのに。

「あれ、花南だ」

ふいに呼ばれて顔をあげると、そこにいたのは桐原くんだった。

彼の前の自販機から、ガコン、とペットボトルが落ちた音が響く。

仕事の合間に飲み物を買いに来たらしい。
まだ帰るわけではなさそうで、彼の首からはネームプレートがぶら下がっていた。

「おつかれ。誰かと待ち合わせ?」

「うん。桐原くんは残業?」

自販機からペットボトルを取り出して、おー、と気だるげに肯定の声をあげた桐原くん。

なんだ。
研修のときは、仕事ができるようになる気がしない、なんて言っていたけれど、この感じだとなんだかんだ上手くやっているみたい。

そういえば大学のころから、口では色々言いながらも要領よくこなすタイプだった。

今もどうやらそれは変わらないらしい。
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